まだまだ寒さの厳しい時期。空気も乾燥し体調を崩す利用者さんも多いことでしょう。インフルエンザの感染が特に心配なこの季節、発熱した患者さんに対してどのような処置をしなければならないのでしょうか?
厄介なのはインフルエンザに感染して発熱しても、早い段階での検査では反応が出ないことがあるということです。理想を言えば、発熱の初期は解熱剤でいったん過ごし、翌日検査を受けることをお勧めします。また初期症状が咳や痰から始まり、喉や気管支などの症状が先に出ている場合には、インフルエンザ以外の感染症も考える必要があります。
細菌感染による扁桃腺炎を起こしている場合は、ウイルス感染症とは明らかに異なります。扁桃腺が腫れあがり、白い膿がべっとりと付着します。ウイルス感染では膿は出ないのです。利用者さんがものを食べなくなったら、「喉が痛いから飲み込みづらいのではないか」と考えてみましょう。
感染症の原因がウイルスであったとしても、細菌であったとしても、咳と痰の有無は必ず確認してほしいものです。咳が出る場合には肺炎に進行している可能性があります。肺炎は現在、日本人の死因の第5位になっているため、早期診断が求められます。さらに痰が絡み咳も出る場合には、その分泌物によって他の利用者さんにうつす可能性があります。また、夜間の咳は睡眠の妨げになり、そのため体力の回復が遅れ、治癒も遅れてしまうことになります。日中の咳の有無と同時に夜間の咳の有無も知らせていただく必要があります。
このような利用者さんが出た場合、医療機関を受診させるべきかどうか、どこで判断すれば良いでしょうか? 1つには、食事が摂れるかどうかです。食事が摂れていれば薬が飲めるでしょうし、水分摂取もできるので点滴の必要がありません。もう1つは、血中酸素濃度です。それが保たれていない場合は、肺炎の可能性が高いということになります。
病気は種類によらず早期発見、早期治療が望ましいことは言うまでもありません。だからこそ丁寧に状態を把握しておくことが肝心なのです。皆さんのルーティンワークが充実することこそが利用者さんの安心・安全な日常生活につながっていきます。それが結果として施設全体の安定につながっていると思っていただければ嬉しい限りです。
髙橋 公一氏
たかはし こういち
医療法人 高栄会 みさと中央クリニック 理事長 医学博士