地域包括ケアを支える高齢者の住まいを考える

順調に推移するサービス付き高齢者向け住宅
- その課題と、広がる期待とは -

  • 創刊号2016年9月15日発行

現在、20万戸を超える住居が提供されている サービス付き高齢者向け住宅。 地域包括ケアシステムの中心的存在としての 期待が高まるこの新たな「住まい」、 いわゆる「サ高住」の解決すべき課題とポテンシャルとは?

5年で20万戸が開設 増えるサ高住の課題とは

2011年の「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」の改正により、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)の制度が創設されて5年。現在では20万戸を超えるサ高住が開設されている。建築費の高騰等もあり、「10年間で60万戸を確保」という当初の目標には及ばないものの、比較的堅調な成長を遂げていると言えるだろう。

開設される戸数が増えるにつれ、その課題も見えてきた。一般財団法人サービス付き高齢者向け住宅協会(以下、サ住協)の五郎丸徹理事は、その課題を①健全経営②サービスの品質だと分析する。 「サ高住の制度が始まって5年、経営がうまくいっている事業者とそうでない事業者の差が広がってきました。中には、収益性が損なわれ、事業譲渡となるケースも見られます。入居者が安心して暮らすためには、経営の安定は不可欠です。

161111002 そもそもサ高住は、高齢者が安心して暮らせる住まいである賃貸住宅に、生活支援サービスが付いたものです。特別養護老人ホームのように、住宅の設備や福祉サービスの内容が厳密に定められてはいません。事業者によってその 性格を大きく変えることができる一方で、コンセプトや事業モデルをきちんと定めないと、入居募集や職員の確保、その後の運営が難しくなるという傾向もあるようです。私は開業を検討している事業者の方に、健全経営のためのポイントのどれが欠けても運営は難しくなるとお伝えしています。利用者のためにも、健全な経営を進める事業者が増えることを期待しています」(五郎丸理事)