3月31日に東京・大田区で開催された。
スペシャルシンポジウムでは、在宅、病院、施設、
それぞれの「看取り」をテーマに、
立場の異なる専門家による
熱い議論が行われた。
取材・文/富田 チヤコ 写真/小川 一成
地域を支える、 顔の見える関係づくり
大田区産業プラザPIOで開催された第二期定時総会は、医療や介護の専門職のほかにも、行政担当者や高齢者に関わる事業者など、総勢300名の参加者で始まった。来賓として、唐澤剛さんと中原賢一さんが挨拶。
唐澤さんは、世界一の高齢社会である日本は人口減ばかりが注目される中で、産業別の就労人口も徐々に変化している点に着目。就労者数で最も多いのは製造業で960万人。次いで卸小売業900万人、3番目が医療・介護・福祉業700万人であり、医療・介護・福祉の就労人口だけが唯一伸びている点を踏まえ、「医療や介護の人材を育て、賃金を上昇させることが、日本経済や、地方創生にとっても必要」である点を強調した。また、地域包括ケアについて「地域の中で1つの チームができるためには、顔の見える関係づくりこそが重要」と述べた。
中原さんは、人口72万人の大田区でも、看取り、在宅医療、育児・介護が重なるダブルケアの問題などが発生している現状を報告。団塊の世代が75歳になる2025年まで、あと7年。大田区で行われている「元気 シニアプロジェクト」をはじめとする地域力の活用、切れ目のない支援、介護予防の取り組みを紹介しながら、「こうした取り組みは、行政だけの支援では限界がある。専門職とつながる体制づくりを、2025年までに作りたい」と考えを示した。
唐澤 剛さん
内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部/地方創生総括官(元厚生労働省保険局長)
中原 賢一さん
大田区福祉部長
安心できる「看取り」のために
スペシャルシンポジウムでは、2030年に47万人が「看取り難民」になる現状が提示され、「あなたが選ぶ最期の場所は?施設×病院×在宅」をテーマに、それぞれの分野の最前線で活躍するスペシャリストが、「看取り」についての意見交換を行った。
在宅医療に携わる安井佑さんは、家で生活することそのものが自分らしさとした上で、「住み慣れた家で、自分のペースで生活 できるのが、在宅の看取り。まだまだ病院で亡くなる人も多いが、医師として在宅の看取りに不安を感じている本人や家族の気持ちに寄り添っていきたい」と語った。
病院での看取りに携わってきた横山太郎さん。「病院に送れば 安心と思われがちだが、病院以外の選択肢を医師が説明できないこともある。医療職と介護職が連携することで、本人が安心して最期を迎える場所を、本人が、そして家族も選択できる」とし、職種間の顔が見える関係づくりの必要性を述べた。
30年以上にわたって特別養護 老人ホームに関わってき菊地雅弘さんは、「施設は死ぬための場所ではなく、住み慣れた自宅から 居場所を変えただけ」である点を強調。自己決定できない高齢者の命を支えるためにも多職種連携が必要だと述べ、さらなるディスカッションの継続を提案した。
約50分におよぶスペシャルシンポジウム。3人の取り組みや考えに、約300人の 参加者が熱心に聞き入っていた。
安井 佑さん
医療法人社団焔 やまと診療所 院長/一般社団法人医介理事
横山 太郎さん
医療法人晃徳会横山 医院 緩和ケア内科・腫瘍 内科/Co-Minkan普及実行委員会共同代表/Indicocrea代表理事/神奈川の地域医療を考える会 幹事/死の臨床研究会 関東甲信越支部 役員
菊地 雅洋さん
北海道介護福祉道場・あかい花 代表/北海道福祉教育専門学校非常勤講師/登別市介護認定審査会委員/北海道地域密着型サービス外部評価員/総合健康推進財団訪問指導員
●開会の挨拶
一般社団法人医介代表理事
猪飼 大さん
職種を超えた連携ができる医介塾。顔の見える関係づくりを進め、さらに在宅生活の円滑な支援を目指したい
閉会の挨拶
一般社団法人医介代表理事
柳田 頼人さん
大田区からスタートした医介塾。多職種が連携し、つながることの重要性を、今後も全国に広げていきたい
塾長からのメッセージ
北海道・札幌から沖縄県・宮古島まで、全国に広がろうとしている医介塾。首都圏各医介塾の活動報告も行われた。
熊谷医介塾 塾長
安相 佳子さん
医師会、行政、保健所。さまざまな人たちとつながる、架け橋の存在になりたい
板橋医介塾 塾長
森本 達郎さん
急性期病院が都内一多い板橋区。地元にゆかりのある方を招き、講演会なども開催予定
埼玉西部医介塾 副塾長
渡邉 浩之さん
医療資源が少ない地域。職種を超え、わかりあえる関係づくりを目指したい
足立区医介塾 副塾長
一ノ瀬 渓子さん
Facebookを活用しながら、地域で活躍する新たな仲間を募りたい
蓮田医介塾 塾長
田口 仁さん
はすだ広報大使「にゃんたぶぅ」と一緒に、健康ダンスを考案。今後も懇親会と勉強会を開催
湘南医介塾 塾長
小澤 朋和さん
参加するすべての人たちといっしょに形あるものを作り、地域貢献できる場にしたい
池袋医介塾 塾長
萩原 寛之さん
チラシ配布も自由。人と人とがつながる場となり、新たなビジネス誕生の場にしたい
北区医介塾 塾長
張原 正義さん
医療や介護の従事者のほか、当事者が参加することもある。顔の見える関係以上になりたい
八王子医介塾 塾長
中村 哲生さん
今春から始動。勉強会の開催により、地域全体を盛り上げる存在になることを目指す