そこまでやるか!在宅医療 第2回

褥瘡は医療と介護の連携で治す

  • No.72018年5月31日発行
患者さん、利用者さんの状態の変化を観察し、早期発見、早期治療。そのためには多職種連携が必要です。さて、シリーズ第2回。看護師、介護士の皆さんが日々遭遇する褥瘡の問題。それでは、髙橋先生の在宅往診をのぞいてみましょう。

 患者さんの身体を横向きにしてお尻を見ると、大きく皮膚がえぐれていました。中は黄白色の膿と壊死した組織がぐちゃぐちゃに混在しています。ひどい床ずれ(褥瘡)ができていたのです。

身体の同じ部位が圧迫し続けられ、血行不良になると褥瘡ができやすくなります。まめに身体の向きを変えれば予防できますし、細かく身体を観察すれば早期に発見できます。褥瘡は、看護師、介護士が防ぐことのできる疾病です。患者さんも皮膚がえぐれているのに痛いと言わないのは、それくらい全身の状態が悪いということです。その原因が患者さんのもとからの病気(糖尿病など)にある場合は、お医者さんがその治療をしていきますが、脱水で循環血液量が不足している時や栄養不良で傷の周囲が盛り上がってこない時は、施設での水分摂取を促してもらったり、食事の量を増やしてもらったりします。つまり、褥瘡を治すには、医療と介護の連携がとても重要なのです。

私は、その褥瘡の壊死した組織を切除し、膿を出しました。生理食塩水で洗うと、きれいな肉芽が露出し、うっすらと血がにじんできます。血流が良いほうが傷は治りやすいのです。終わりに抗生物質の粉末をまいて創部をガーゼで覆いました。翌日から、施設の看護師さんに創部を生理食塩水で洗ってもらい、介護士さんには体位変換をまめに行ってもらいました。次に薬剤師さんと相談して、抗生物質と組織再生を促すミネラルを処方しました。さらに、管理栄養士さんと患者さんの必要カロリーを計算し、食事量を増やしました。これを2ヵ月半ほど続けると創部はきれいにふさがりました。

褥瘡に限らず、施設患者さんを安定させ治療を促すには、各職種が一致協力しなければいけません。他の施設の人たちとつながることだけが多職種連携ではありません。それよりむしろ、内部連携を強化する方が、利用者さんのためになりますし、施設も理想へと近づくことができるはずです。毎日会う同僚が一番長い時間を一緒に過ごしているわけですし、何かあればすぐに直接会って相談できる職員が最高の協力者であるべきだと私は信じています。問題解決の糸口は、きっと身のまわりで見つけることができるはずです。

 

髙橋 公一氏

たかはし こういち

医療法人 高栄会 みさと中央クリニック 理事長 医学博士

人呼んで「くだもの」のお医者さん。ポータルのエコーやレントゲン、内視鏡などの医療機器を持参して往診。胃ろう、気管切開チューブ、尿道バルーンといった「くだもの(管物)」の交換を患者さんのベッドサイドで行う。同時にそのトラブルにも対応。褥瘡治療、陥入爪、痔核なども往診にて処置・加療する。またNST(Neutrition support team)経験も豊富で、往診先でも栄養指導を取り入れた回診をしている。ポリファーマシー対策にも力を入れている。