地域包括ケア最前線

慢性期リハビリは「街」が担う
- 脳リハビリ医の街づくり-

  • 創刊号2016年9月15日発行

「病院に来なくても、街で元気になれる」

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酒向医師は”人間力回復の脳リハビリ“に取り組みながら、2008年、国土交通省に健康・医療・福祉のまちづくり委員会を立ち上げ、「慢性期の患者さんが外に出ることができる環境」を国に提案。「健康・医療・福祉のまちづくりの推進ガイドライン」策定の原動力となる。ちょうどその頃、東京都では山手通りの8.8㎞に渡る大改修工事が計画され、酒向医師の勤務先だった初台リハビリテーション病院の前も含まれていた。酒向医師は東京都に「ヘルシーロード」の開発を提案。自らプロデューサーとなって、市民、行政、患者支援団体、沿道企業、病院、大学、有識者などからなる勉強会をつくり、議論を重ねた。「渋谷区との連携、地域住民にどう参加していただくか、ということをまず考えた」と酒向医師は語る。

161014005  そうして生まれたコンセプトは 「24時間散歩ができる道」。歩道幅は4mから9mに拡張され、歩道と自転車道、車道が植栽で分かれ、電柱は地中へ。緑豊かな散歩道が実現した。

 

 

 

 

 

161014001一方、東急電鉄から、東京都世田谷区・二子玉川駅前地域の大規模再開発にあたり、酒向医師にアドバイザーとして協力の要請があった。同駅の近くに新しくリハビリ専門病院「世田谷記念病院」を立ち上げる依頼を受けた酒向医師は、駅前エリアを慢性期リハビリに活用することを提案。その考え方も取り入れて街の再開発は進み、2015年春に完成。多くの人でにぎわっている。

「病院でリハビリをして、外に出て動けるようになった患者さんには、実際に駅前の開発エリアで動いてもらうようにしました。退院後は病院に来なくても、そこで元気さを継続する生活モデルを作ったのです」

初台ヘルシーロードが道路を使った〈線〉のリハビリモデルなら、二子玉川は〈面〉のリハビリモデルだ。いずれも全国から多くの見学者があり、皆口を揃えて「すごい」と感嘆する。

「でも、『とても自分の地域では実現できない。だから、真似ができるモデルも作ってほしい』とも言われました。それで考えたのが、自治体と医療ががっぷり組んだ街づくりでした」