2011年、2016年と私はデンマークで高齢者の暮らしを視察してきました。2011年には、デンマーク第4の都市であるオールボーにて、コーポラティブハウスを自ら建設し思い思いに暮らす自立した高齢者や、障がいがあっても自立して暮らす人々を視察し、2016年は、デンマーク第3の都市オーデンセで、認知症の人々が暮らすプライエボーリ〔住宅〕や高齢者の生活を支えるロボティクス技術を見学してきました。
「高齢者は介護の対象ではなく、生きる主体である」―――これがデンマークにおける高齢者の生活への基本的な姿勢です。高齢者福祉の基本理念は「自立支援」「自己決定」にあります。存続する機能をできるだけ生かすこと。医療は日本と異なり、かかりつけ医制度があり、大きい病院にはフリーアクセスではありません。デンマークの平均寿命は世界27位で80.6歳(2015年)。日本の平均寿命とは3歳の差があります。デンマークでは医療的処置により人が生かされることはありません。これが良いか悪いかはそれぞれの考え方で判断は異なりますが、今回訪問した認知症の患者のためのプライエボーリ〔住宅〕では、ほとんど薬を使わず、個々の認知症のレベルにあわせてリハビリテーションで対応しているとのことでした。一人ひとりが自分の与えられた人生を自立して生きるための福祉。それがデンマークの高齢者福祉に対する基本的な考え方なのです。
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