デンマークで見た ロボットや道具たち
オーデンセ市を中心とした南デンマークには、認定技術サービス機関である「DTI(Danish Technological Institute)」のロボット技術センターなどが立地し、世界的なロボットクラスターが形成されています。私たちもDTIを訪問しました。自立を助けるための技術という側面が強く、残存機能をできるだけサポートするためのロボットや道具類が展示されています。DTIはロボットや道具の評価をすると同時に、各自治体への使用方法の指導およびディストリビュータとしての役目も担っています。
日本生まれのセラピー用アザラシ型ロボット「パロ」や、小型の遠隔操作型アンドロイド「テレノイド」も展示されていました。「パロ」はデンマーク各地の介護施設にDTIを通じて導入されています。こうしたコミュニケーションロボットは日本のお家芸です。今回 DTIでは、PEPPERのプレゼンをさせていただきましたが、DTIの方々の関心も高くとても有意義でした。そのほか患者の移送をするためのリフティングのロボットや食事のサポートロボットなどが展示され、実際の使い方などのレクチャーが行われていました。
今回オーデンセではロボットビジネスカンファレンスが開かれ、いくつかの介護領域のロボットを見学することができました。その中の一つであり日本人の発想にはないであろう、「ズボン上げ下ろしロボット」をご紹介して締めくくりたいと思います。ハンディのある人が立ち上がってボタンを押すと、サポートの手が下着とズボンを上げ下ろしてくれます。まさに「自立支援」「自己決定」の考え方、” 存続する機能をできるだけ生かす“をカタチにしたロボットだと思いました。
すでにデンマークでは、ICTやロボットが介護の現場に普通に入っています。そこで重要なのは、どんな技術を入れるかではなく、どのように暮らしを支えるかということ。日本では、どうしても技術論が先行しがちですが、こうしたデンマークの視点は高齢者のサポートシステムにとって重要であると改めて気付かされた旅でした。
阿久津 靖子氏
あくつ やすこ
株式会社MTヘルスケアデザイン研究所 代表取締役・所長
筑波大学大学院理科系修士環境科学研究科にて地域計画を学び、GKインダストリアルデザイン研究所入社。プロダクト製品開発のための基礎研究や街づくり基本計画に携わる。1999年、子育て期の終了とともに、子ども家具「フォルミオ」で情報発信型店舗の運営を行い、その後、寝具会社数社にて商品企画開発(MD)および研究、店舗の立ち上げ、マネジメントを行う。その当時より、ヘルスケアライフスタイル創造を目指す製品開発や店舗プロモーションを模索し、(株)メディシンク ヘルスケアデザイン研究所企画室長として参画。2012年独立し、デザインリサーチファームとして(株)MTヘルスケアデザイン研究所を創業。