
取材・文/編集長 加藤 桂示 写真提供/ささえる医療研究所
地域の中にある普通の「家」
そこは、住宅がゆったりと建ち並ぶ通りに面した平屋建ての一軒家。「訪問看護ステーション」や「居宅介護支援事業所」というような、この場所が何であるかを示す看板すらまだ表には設置されていない。施設や事業所であることを感じさせる雰囲気がないのだ。そこは地域の人が普通に暮らしていたとしても少しもおかしくないような当たり前の建物なのである。その家(そう、まさに何の変哲もない家なのだ)を包み込む静かな空気は、ひととき私にここを訪れた目的さえも忘れさせてしまうのだ。
「まるごとケアの家いわみざわ」は、そんな雰囲気をまとっている。宮崎の「かあさんの家」*2が「地域に生えてきた」のであるならば、「まるごとケアの家」は、「もともと地域の中にあり続けていた」ように思える。そして時代の必要に応じて(あるいは時代の潮流に刺激され)、その名称を与えられ、あらためて地域に向けて扉を開いたのだ。そこには、新たに加工されたような異質感はなく、だから、オープンしたてであっても不思議な懐かしさを感じさせるのだ。

北海道岩見沢市は、空知地方の南部、石狩平野の東部に位置し、石狩川左岸から夕張山地にかけて東西に広がる市域を持つ。北海道内にある陸上交通の要衝の一つであり、とりわけ高度経済成長期には近隣の炭鉱と北海道各地の港湾都市とを結ぶ列車の一大拠点となっていた。また、日本有数の豪雪地帯であり、国から特別豪雪地帯の指定を受けている。
人口は83,369人(2017年5月末)。人口減少もすすんでおり、この10年間で約1万人の人口が減少している。高齢化率は32.5%。全国平均の26.3%を大きく上回っている。

ポプラ並木は地元の人たちの自慢。どこまでも一直線の道が続く。冬景色もひと際美しい