そこまでやるか!在宅医療

こまめな支援で“脱水”を防ぐ

  • No.122021年8月16日発行
○○さん、あまり水分を摂ってくれないんですけど…。気をつけてね、高齢者は脱水になりやすいんだから!えっ、でも、どれくらい飲んでもらえばいいの?どうしたら飲んでもらえるの?―――皆さん、髙橋先生の話に耳を傾けてみましょう。

 

高齢者の中には、喉の渇きや脱水の状態を自覚することが難しくなっている人もいます。「気づいた時にはすでに脱水状態だった」ということが珍しくありません。高齢者の身体の水分含有量は体重の約50%で、若年者と比較してその割合が低下しています。それを前提に水分摂取量を考える必要があります。

最近では成人の1日の必要水分量は、体重1kgあたり40〜50mlを推奨する文献も多く見かけるようになってきました。以前よりも設定量は多くなっています。体重が50kgの方だと、2,000〜2,500mlの水分摂取が必要となります。食事で1,000mlを賄うとしても、残り1,000〜1,500mlは、飲料水を摂取することになります。

ここで注意すべきなのは、提供している飲み物が必ず全部摂取される前提で計算されていることです。飲み残しが出てくることも見越して飲料水を用意しなければなりません。つまり、“1人1日分”で用意する水分量は、2割ほど増やして1,800ml位とするのが良いでしょう。また、500mlのペットボトルを一気に飲むことは容易ではありません。1回の水分摂取量は100ml前後とし、できるかぎりこまめに摂ることを心がけましょう。

朝起きて飲む、着替えたら飲む、朝食前に飲んで、食後に飲んで、デイサービスの前に、最中に、終わりに、と飲んでいただく。1回の摂取量を多くせず、飲水回数を増やすのです。そして、可能なかぎり午前中に1,000ml以上の水分を摂取するように工夫したいところです。1日で最も暑くなる14時より前に可能なかぎり、水分を摂っていただくことで、病的な脱水の予防になります。また、午後になってから沢山の水分を摂ると、夜間排尿の回数が増え睡眠不足になりかねません。摂取する水分の味にも工夫してみましょう。お茶、水、スポーツドリンクなど、フレーバーを変えたものを最初から用意すると、味が変わって、知らず知らずに1日の水分摂取量を増やせます。

また、水分を“食べて”いただくのも良いでしょう。水分をゼリーにして、水羊羹にして、ところてんにしてと、形態を変えて摂取を促しましょう。

これを総じて「W.I.S.〜Water Intake Support(水分摂取サポート)〜」と称します。各介護現場で是非呼びかけて欲しいと思います。

コロナの時代、解決すべき問題は山積みだと思われます。それはどこの施設でも同じことです。青く見える隣の芝生を羨むより、自分の家の庭(Garden)を素敵に囲って(Gard)もらいたい。真の楽園(Eden)を目指して。

髙橋 公一氏

たかはし こういち

医療法人 高栄会 みさと中央クリニック 理事長 医学博士

人呼んで「くだもの」のお医者さん。ポータルのエコーやレントゲン、内視鏡などの医療機器を持参して往診。胃ろう、気管切開チューブ、尿道バルーンといった「くだもの(管物)」の交換を患者さんのベッドサイドで行う。同時にそのトラブルにも対応。褥瘡治療、陥入爪、痔核なども往診にて処置・加療する。またNST(Neutrition support team)経験も豊富で、往診先でも栄養指導を取り入れた回診をしている。ポリファーマシー対策にも力を入れている。